2月3日(土)

 旅人さんお薦めの1冊 L&N ゴールドストーン「古書店めぐりは夫婦で」(ハヤカワ文庫)(原題 Used and Rare Travels in The Book World)、文藝春秋編「もの食う話」(文春文庫)がアマゾンから届いた。「もの食う話」の解説はあの堀切直人氏が書いている。

 先日東京が大雪に見舞われた週末、幡ヶ谷のソフトウェア会社で、三日三晩キーボードをたたき続ける恐るべきプログラマ集団につきあい、ほとんどロジェ・カイヨワの世界であることに驚嘆したことは前に書いた。それはもう、受注したノルマを期日内に完成させるとかいったようななま易しい言葉では説明のできない、ある種の神々しい遊戯であった。そんなことが頭にあって、

 先週末届いた日経ビジネス2−5号を今朝方手にした。このところこの手のビジネス雑誌もツンドクのままのが多い。さて「爆発する携帯情報端末市場の寵児〜23歳の天才プログラマー、世界標準狙う」という記事が気になって読んでみた。奥 一穂氏は、京都生まれの23歳。大学在学中に開発したパームスケープは、パーム端末上のブラウザ。それは単なるブラウザではない。プロキシ・サーバを介してWWWから受け取るデータを圧縮加工し、パームに最適なかたちにして提供するブラウザなのだそうだ。(詳細はまだ読んでない^^)さて記事のおしまいにこう書いてあった。彼が取締役を勤める会社の名はイリンクス。「フランスの哲学者ロジェ・カイヨワの著書に出てくる「眩暈の遊び」を指す古代ギリシャ語が由来だ。(中略)奥の本当の評価は、毎日がイリンクス(眩暈遊び)のようなこの分野で、今後もどれだけ時代を先取りし続けられるかにかかっているといえよう。」(記事より引用)まったくの偶然だが、私の直感があたったようで妙にうれしくなった。

 中年や遠くみのれる夜の桃  三鬼
およそ俳句の評釈とは遠い私ですが、それだけいっそう気楽にこの句が楽しめる心境です。
たとい夜の桃が、実景であろうが、過ぎ去ったエロス的な憧れの表象であろうが、はたまた
俳句を通じてしかたどり着けない<美の象徴>であろうとも・・・。(「かわうそ亭の清談歓談掲示板」に投稿)

 エロスの象徴としての桃については、折口信夫に小文があった。(「桃の伝説」全集第3巻所収) 冥府の国から追ってくる亡き妻イザナミを追い払おうとイザナギが手にするのは桃の木の枝。孫悟空が暴れてだいなしにしたのは、天界の桃の園。中国の桃の神秘性については中野美代子だって当然言及してるだろう。このところちょっと<桃>のことが気になっている。

2月8日(木) 晴れ

 池袋サンシャインにて、開催中のPAGE2001(印刷テクノロジーのフェア)に出かけてきた。XMLに関する動向を調べるため。

 近くの書店リブロ?で、久世光彦の新刊「月がとっても青いから マイラストソング3」(講談社)を立ち読み。沢田研二がタイガーズ解散後に、たしか昭和45年頃歌った「君をのせて」、その歌曲の不思議な魅力を延々と書くあたりに、こころときめいた。この時間この地球で、「君をのせて」なんて今やおよそ誰も覚えていないようなマイナーな歌謡曲に、執着しこころときめいているのは、久世さんとぼくくらいなものだろう、魂が通いあうというのは不思議なことだと妙にこころが慰められ優しい気分になったのだった。で、会社への帰り道、禁断症状を抑えられなくなり、吉祥寺さかえ書房にて「死のある風景」(新潮社)を1800円で。

2月11日(日) 晴れ

 一月末からの狂乱が一段落し、今はすこし中休みといったところ。どうせ来週もいそがしいだろうから、今日はのほほんと休むことにした。

 と、このあと、連綿と、<桃>論議や本日の日経朝刊の川上弘美さんのコラムの魅力を書いていたところ、PCが突然フリーズしてしまった。がっくり。かつてコールリッジが奇想な夢をみた直後に一心不乱に筆を走らせていたそのとき、無粋な友人の訪問で中断されそれっきりになってしまったという未完の詩「クブライ・カン」と引き比べて己を慰めているが、今や再び書く気になれない。

 渡辺竜生「XMLハンドブック」(ソフトバンク、1400円)。今日は石神井で川本三郎「大正幻影」(新潮社)、川端康成「掌の小説」ヘッセ「世界文学をどう読むか」「流浪の果て」「車輪の下」、ワールドロップ「複雑系」(以上すべて新潮文庫)計640円。

 NTTにADSLを申し込んだ。サービス開始まち。家庭内LAN、インターネット常時接続の野望が沸々と・・・。

2月17日(土) 晴れ

 例によって週末もエンドレスの仕事に突入。

 吉祥寺「りぶる・りべろ」にて、小林恭二「俳句という遊び」(岩波新書)330円。旅人さん・かわうそ亭御主人・Yoさんの薦めによる。小林恭二というひと、これまでは縁がなかったのだが、この本は「句会」の魅力を伝えて楽しい。

2月18日(日) 曇り

 ほんと貧乏暇なしとはよくいったものだ。金が余っていて暇があれば世間ではおじさまとかいって慕われるらしいが。中年や金なし暇なし色気なし である。

 石神井公園にてオースティン「自負と偏見」(上・下)(中野好夫訳、新潮文庫)、夢枕貘「上弦の月を喰べる獅子」(上・下)計450円。それぞれモシキさん・旅人さん、由里葉さんの薦めによる。まだ読んでない。

 今朝の日経朝刊、読書面のコラム。川上弘美の「気になる本」。先週もそうだったけど、うまいこと書くなあ。憂鬱な朝、すこししあわせになった。Acrobatファイル 仕事しながらちらちら切り抜き記事を読むと切なくなって目頭が熱くなって困るので、amazonで彼女のエッセイ集を注文しておいた。弘美さんについては私設HPもあるのね。

 検索エンジン、ひとつはBiglobe、もうひとつはGoogle。いまさら全文検索エンジンだなんて、って思うでしょ。でもgooに飽き足りない貴方にはいいかも。Googleの速さは尋常じゃない。痺れた!手元のローカルディスクの検索だってこんなに速くはないぞ。(後記:職場のKさん及びEさん謂う、Biglobeの検索エンジンは、Googleであると。どこが開発したのだろう?)

2月19日(月) 晴れ

 仕事漬けの日々。色気が恋しい。色気というと誤解を招くかもしれない。春の予感ということ。

 午前11時30分の渋谷宮益坂の会合。青山学院方向に向けて坂をたったかたったか上る上る。中村書店、巽書店の2古書店。きらびやかなビルの谷間で健気に生きている古書店ふたつ。仕事の関係でゆっくりのぞけなかったが、それでも少ししあわせだった。

2月21日(水) 晴れ

 昨日吉祥寺「りぶるりべろ」にて、吉野登美子「わが胸の底ひに」(弥生書房)500円。副題は「吉野秀雄の妻として」 吉野登美子さんは一昨年のちょうど今頃94歳で亡くなられた。そのとき書いた拙文はここ。昼休み、この古書店の隣のとんかつ屋でとんかつのくる前にこの本を開いた。のっけから涙がぽろぽろ流れて恥ずかしかった。

2月22日(木) 晴れ

 随分暖かい春めいた朝だ。小泉信三「軍主計大尉小泉信吉」(文芸春秋)300円を「りぶるりべろ」にて。一昨日はとんかつ屋でぽろぽろ泣いたが、昨日はその隣のラーメン屋でラーメン待つ間に大粒の涙。後記を読んだだけでこのありさまだ。

2月25日(日) 晴れ

 吉祥寺ラオックスにて結城浩「Perl言語プログラミングレッスン(入門編)」(ソフトバンク、3200円)。Perlについては随分前に古典的名著R.L.シュワルツ「初めてのPerl」(これがいわゆるラクダ本?)で挫折していたが、結城さんのこの本はとても丁寧な構成で、わたしでもなんとかなりそうだ。この本には、Active Perl (Win版、UNIX版)が同梱されていて、インストールも簡単である。もっともCGIについては、同氏による姉妹本「Perlで作るCGI入門」(基礎編・応用編)まで読み進める必要がある。

 アマゾンからは、川上弘美「あるようなないような」(中央公論新社、1800円)、J・L・ボルヘス「ボルヘスのイギリス文学講義」(国書刊行会、2000円)が届いた。届いたばかりで、当然まだ読んでないけど、付録の翻訳書誌を読んでるだけでも、楽しくなる。ボルヘスの本を買うのは、「永遠の歴史」(1986年刊)以来15年ぶりだ。イギリス文学史といえば、かつて由良君美(残念なことに早世された)が青土社から出していた本がとても面白くて、そののち結構影響を受けたのだが、今書棚の奥深くに眠っていて書名が思い出せない。

 日経読書欄コラム。佐世保在住の作家佐藤正午氏の昨今の反響を浦田憲治氏が書く。紹介されていた佐藤正午氏のHPもなかなか誠実でおしゃれ。デビュー作「永遠の1/2」以来17年。作家とわたしはほとんど歳も同じで、ライフスタイルというか感性というか不思議に親しいものがある。読もう読もうと思いつつ作家と同じ17年が過ぎた。そのことがいささかの感興をさそう。

 作家・評論家の亡くなった日を記録したページ、Dead Writer's Society 。新聞の訃報欄を簡潔に記録したような構成で、完璧ではないが、妙に気になった。

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