10月6日(金) 晴れ

 ぐずぐずと雨模様の日々が続いていたが、今朝はようやく晴れ間がみえている。先日、長年住み着いた北側の洋室を長男に明け渡し、南向きのリビングに、机とPC、書籍を移した。引き続き次男と同居である。PCを窓際に設置したら、悲しいかな、電話ケーブルがとどかない。昨日妻に10mのケーブルを買ってきてもらって、ようやくインターネットが開通した。無線LANの魅力を痛感。

 中年であることの恍惚と不安我にあり。もちろん太宰治が引いたヴェルレーヌの詩のもじりだ。最近の私の心境はこんなところ。意外に思われるかもしれないけど、私は仕事が楽しい。たとい雑用と人不足のせいでいっこうに仕事がはかどらなくても、夢がある。その夢はというと、やっぱり IT 関連の仕事。インターネット関連の技術の進化はすざまじく、あっと驚くようなことがごろごろしている。

 例えば、IBM の Techexplorer。ブラウザでTeXやMathMLの数式を表示できてしかも2バイト文字対応となると、現状ではこれしかないみたい。先日仕事場のDynaBookにインストールして、おおいに感動した。

 その感動のさめやらぬうちに、今度は、アドビの新技術。SVG。ベクトルデータのグラフィックを、XML準拠の形式でテキストで記述する。Acrobat以来の久々の大進化ではなかろうか。例えば、数学の教育へ応用すれば、関数のグラフといった、従来のWebではjpegなどの画像として貼り付けるしかなかったものが、数式の記述とともにテキストデータとして格納できるから、生きたデータとして活かせるのではないかしら。事実、アドビのサイトには、数式を代入すれば動くリサージュをたちどころに返すようなデモものっている。アクティブでダイナミックでシュミレーション可能な、躍動感のある教材が作れるのでは?

 他にも、数研出版のStudyAidシリーズ、某社のOMRを使った個別確認テスト管理システム、某i社のBackOfficeをベースにしたeラーニングのソリューション等々、さまざまな可能性を秘めた、教育関連の話がごろごろしていて、とても面白い。

 面白いのだが、なにせ素人の悲しさ、技術の細目になるとついてゆくのが大変だ。「技術は細部に宿り給う。」そんなわけで、いまさらという感もするが、斉藤孝「サーバのしくみがわかる本」(技術評論社)1580円、足立理一「基礎からのJAVA2」(工学社、1900円)、「JAVA Press Vol.14」(技術評論社、1380円)などを買い込み、お勉強しているこの頃である。

 一方、新書版谷崎潤一郎全集全30巻(中央公論社)7000円は吉祥寺のBookStationで。それから現代詩集アンソロジー全3巻(集英社、900円)は吉祥寺りぶろりべらるにて。吉野弘や金井直や福永武彦の昔読んだ詩を再読して秋の夜更け感傷にひたってる。

10月8日(日)曇り

 日経ビジネス誌10月9日号で紹介されたネット検索会社Keen.com (http://www.keen.com/)。調べたいカテゴリーごとに、回答スタッフがリストアップされており、電話を主にして各種のコンサルティングをおこなう。回答者のサービスの評価は質問をしたひとから即座に吸い上げるシステムになっていて、その評価の詳細はWeb上で、相談料とともに閲覧できる。面白いビジネスモデルだなと思った。中高生対象のサービスに応用できるのではないかな。

 【光ディスクの栄光と悲惨】民生用途のDVD-Rの規格がようやくこの9月に合意に達したと思ったら、もう開発の中心は次世代光ディスク(post-DVD)に移っているようだ。日経エレクトロニクス誌10月9日号では、ソニーやパイオニア、日立等によるDVR-blue仕様等の次世代機の開発をレポートしている。片面22.5GBから25GBの容量だから、二層式DVDの2倍以上の容量(現行のパイオニアのDVD-RWは単層4.7GB)である。面密度で再びHDDを抜く日も近いとか。この手の光り物の規格はいったん決まると今度は抜け出せなくなるでしょ、だから合意に達するまで時間がかかる。かかってるうちに開発の中心は次世代規格に移っているという、ジレンマ。

 【Napsterを知らずして】インターネットの未来を語るなかれ、といいたいのだろう、日経エ誌の特集「Napsterを知らずして」。広大なインターネット空間で、個と個を結びつける技術。コンテンツの旧来の著作権は順に崩壊し、透かし技術や各種プロテクト技術も焼け石に水になる。将来のコンテンツ・ビジネスは著作権の崩壊をも見越して確立する必要があると。曰く「広告で収益をあげる」「無料コンテンツをばらまき購買意欲を喚起する」「無償コンテンツを配布し、マーケティング情報を得る」「定額制の課金で収益を確保する」「広く浅いこころづけに期待する」「課金対象は所有から再生へ」。こうして書き出してみると、インフラ事業・ソフトウェア事業では既知のモデルも多い。そうしたモデルがコンテンツにも拡散して行くだろうと書く。 かんがえてみれば面白いことに、著作権という概念は、複製技術が世界を席巻するようになって脚光を浴びたわけですよね。シェイクスピアや西鶴の昔は、もちろん原作者のオリジナリティに対する敬意と信頼というのはあっても、著作権を逸脱する行為というのは贋作しかなかったわけだし。そもそも、音楽や美術に至っては、本物に接することができたのは今の何億分の一の可能性しかなかったわけだし。グーテンベルク以来銀塩フィルムまでの第一次複製技術時代が、今終焉に向かいつつあるということだろうか。

 現在取り組んでいる仕事とからんで、以上3つの記事が気になった。いずれも教育のビジネスモデルに応用できそうだ。

 ※日経エレクトロニクス http://ne.nikkeibp.co.jp/

10月9日() 

 昨晩、近所をぼんやり散歩していたら、暗がりで若い女性がにこやかに笑いかけてきた。後ろに誰かいるのかなと思って振り返ろうとしたときに、「○○先生〜」と手を振ってくれたのは、元教え子Kさん。なんだかとてもうれしかった。

 このところ、検索エンジンの縁で、このサイトを訪れてくれる方が多い。検索キーワードは「加藤周一」であったり「ハーバート・リード」であったり「螺旋」であったりする。きっとgooの検索エンジンに拾われたお陰だろう。NTT-ME様様だ。もっとも検索エンジンをたよりに訪問された方に満足いただける内容かどうかは別だ。もとよりコンテンツのなかみに深さがないのは以前から反省している。これを機に一層の充実を図りたい。

 石神井公園にて、ヘッベル「ゲノヴェーヴァ」(岩波文庫)200円。

 10月14日() 快晴 宮益坂 中村書店との再会

 朝、雲ひとつない秋晴れの空がひろがっていた・・・。今日は午後から渋谷の宮益坂で e-learning 関連の会社を訪れることになっている。3時頃、渋谷に着いた。せっかく渋谷くんだりまで来たからには、昨年TOEICの受験で青山学院にきたとき見つけられなかった昔なじみの古書店をもう一度よく探してみようと思った。なにも本屋が逃げ回るわけじゃないが、この界隈、この二十年、どんどんきらびやかになっていて、昔ながらの古書店が居心地よく商売ができる場所とも思えない。店主の高齢化と相まって繁華街で消えていった古書店をいくつも知ってる。そんな訳で、昨年青山学院からの帰り路、みつけることのできなかった幻の書店に再会できるかしら、と、ちょっとどきどきしながら坂を上った。もちろん打ち合わせのためにWebからプリントアウトしておいた会社案内のMAPを携えて。おしゃれなお嬢さんたちがたくさん歩いていてうれしい。

 坂をあがってしばらくして、英仏の洋書を扱う古書店に巡り会った。はて昔からあったっけな、なぜかあまり記憶にない。でも想い出のあの本屋じゃないようだ。さらに、坂をあがる。

 ひょんなことに、件の書店は、今日打ち合わせする会社と同じビルの1階にあった。偶然とはいえ、面白いと思った。そしてうれしくなって、会合の時間まで店内を見学した。「吉田一穂大系」(仮面社)揃い、ちょっと箱がくすんでいる。6年ほど前、たまたまここを通りかかったときに見つけたのと同じ本?それから平凡社の「世界名詩集大成」が揃いで2セットもあった。一度神田で揃いをみたことはあるけど、2セットも同時にみるのは初めて。でもセットで10万円はちと高い。他にバラで並んでいた(各巻2500円)ので、こんど買いに来ることにしよう。稲垣足穂の「菫色のANUS」函入、「機械学宣言」(並装)17,000円は高い。

 25年来の古い友人と再会できて、気をよくしながら、同じビルの2階でうち合わせ。瀟洒なビルの一室で、たいへん有意義なうちあわせができてうれしかった。Object指向の、WBT教材オーサリングソフト。面白いように教材が作れる。

 10月21日() 曇り おもちゃがいっぱい〜「本は暗いおもちゃである」(稲垣足穂)〜

 というわけで、先週土曜日渋谷表参道でデモをうけた、オーサリングソフトが昨日届いた。早速インストール。ドキュメントが英文なので、ちょっと大変。ちょっとさわったところでは、昔かじったHyperCardにも似ているような。とまれマスターめざしてがんばろう。時を同じくして、SMIL Editor とか Math Type7.5 が届き、鬼友F君はさっそく研究にいそしんでいるようだ。わたしもMath Type で少し数式をこさえてみた。こさえた数式を、TeX やMath MLで書き出してみると、先日IBMのサイトから落とした TechExplorerを組み込んだわがIE5.5で見事ブラウザ上での数式の表示ができて感動した。おもちゃがいっぱいである。鰹節に狂喜する猫のように、低いうなり声をあげながらはぐはぐとむさぼり食う今日この頃である。だが、たかだかこれに留まらず、XML関連のさまざまなツール類、ストリーミング映像を制作・加工するさまざまなツール・ハードウェアを充実させたいと思う。

 「仏道に入るは易し、魔道に入るは難し」(一休宗純)。日本中いや世界中の、学びに悩む青少年を救済するために、いったん彼らから背を向け(顧客第一主義といった安直な美名を退け)、暗い研究室の片隅で、願う夢とは・・・。ひとつにAdaptive Learning。このためのコースウェアのアピアランスをどう提供するか?の向こうのMaryさんも日夜頭を悩ます。CAT。IRT。ひとつに、映像とWebを融合させた、インタラクティブな講義。ACTV。DVDオーサリング。ひとりひとりに最適化された、ダイナミックな映像コンテンツ。ひとつに、Author Once, Run Anywhere。XML。Webを介したダイナミックなコンテンツの双方向教育。教材制作ワークフローの劇的改善。ひとつに、コミュニカティブなコンテンツ。携帯。受講者ひとりひとりの情報発信。相互啓発。ほかに、新しいかたちのデータベース教材。進学ナビゲーションを可能にするカウンセリングシステム。

 こんなことをあれこれ考えているこの頃、雑用は多く、ちっともはかどらないのだが、夢と希望を捨てずにがんばりたい。昨夜届いた日経エレクトロニクス10-23号。CEATEC JAPAN2000の小特集。「Bluetoothとディスク録画機そしてケータイが席巻」とはうなずけるところ。かたや小特集「家庭内ネットがいますぐ欲しい」では混迷する家庭内のデータ融合の状況をレポート。IEEE1394.1とそのwirelessバージョン。IEEE802。などなど。

 多比羅悟・佐藤尚規「Webマーケティング」(日本実業出版社)1500円をざっと通読しているところ。データマイニング技術は教育のログ解析にも役立つのか?

 10月22日() 曇り 恋は遠い日の花火

 唐突だけど、恋は遠い日の花火にすぎないことをこのところ実感して寂しい。「わたしの青春は暗い嵐にすぎなかった、時折(空を)貫く輝かしい陽のひかりはあったけど」てなものか。

 石神井公園にて、「日本古典文学史の基礎知識」(有斐閣)・佐高 真「タレント文化人100人斬り」(現代教養文庫)<一気に流し読み、おおいに溜飲を下げた、うまく世渡りしてる文化人に劣等感を持つことなし>・真崎守「コミック版 荘子」<意欲は買えど、所詮・・・>、「岩波文庫解説総目録」(上中下巻、岩波書店)計2300円程。総目録の「ドイツ文学」のなかの持ってる本を消しこみしてると、このところ衰えていた文庫蒐集の欲望が少し快復した。この目録を常に携帯して古書店を回ると便利そうだ。(わたしはいつも財布のなかに所有するドイツ文学文庫一覧コピーをしのばせている。)

 今日はテレビを観た。日本シリーズもさることながら、テレビ東京・NHK総合で野球の前後に放映されたインターネットがらみの特集番組2本。放送局は、近い将来送出業務から撤退しコンテンツ制作に専念する会社になるだろう。とは私の謂いじゃない。USAのとある技術系テクノクラートのお方の言葉。インターネット公用語は英語で決まりか?待て待て、あっという間に、TCP/IPで流れる言語コードの約半分は中国語になるだろうと。これもどうやらこけおどしじゃなさそうだ。なにせUSAとヨーロッパを足したよりも大きな潜在的市場が、今や爆発的に成長しようとしている。中国でLinuxを普及させんと日夜努力する中国人技術者集団の熱い仕事ぶりはNHKの特集で。CompaqやHP、そしてIBMは、どうやらWindowsではなくLinuxに賭ける模様だ。何故?中国市場の未開の沃野に豊かなソフトウェアとハードウェアを供給することは、ソースコードと研究成果が常時WWWで公開されているLinuxなしでは実現できないからだそうだ。

 正直いうと日頃映像とくにテレビ映像から遠ざかっていたけど、USAや中国の現況を生々しく知るにはやはり映像は貴重だ。まるで自分が現地に飛んでインタビューしているような実感を持てて、たいへんためになりました。

 10月27日() 曇り 

 水上勉氏の電脳つれづれ草。Webデザインとしてはちょっとあか抜けないところが新潮社らしいよね(誉め言葉)。御歳81歳にしてなおこの努力、なおこの奮闘が、なんだが清々しく、生きることの「希望の原理」と思えてくる。

 今日はこれから恵比寿の某社にDVD/ストリーミング映像オーサリングシステムTargaの見学にいってくる。

 10月28日() 曇り 人生はなんと騒々しいのだろう(Raforge)

 水上勉の現在の文章をWebで発見してうれしく、昨日の朝ふたつのMLにメールを送った。肝心のわたしは、さまざまな雑用の終わった金曜の夜、やっと読んだ。読んで涙がほとばしりでたのだった。読み返す度に涙が零れるのだった。

 なぜだろう?御歳81歳になってなお、水上氏のこころのプラトニスムを感じたから?

 Bunin弾くBach「我汝を呼ぶ、主イエスキリストよ」を聴きながらこころ洗われる今宵。Raforge はかつて嘆いた。人生はなんと騒々しいのだろう、と。遠くにいる、そして再びは逢えない古い友に、今宵この想いを伝えたい・・・。

 10月29日() 

 昨晩の日経夕刊で、詩人・弁護士の中村稔氏のコラム「明日への話題」を読んだ。森澄雄氏の句集「曼陀羅華」を紹介している。最愛の夫人の没後十三回忌にあたり、結婚以来の夫人にゆかりの585句を収めている。中村氏は、この句集を高村光太郎の「智恵子抄」と比較しながら、こう書く。「性愛の昂揚もないし、理想主義もないし、狂気した妻へのかよわぬ愛の哀しさもない。むしろ、平凡な夫婦の日常の中ではぐくまれた、抑制した情感、恋情がある。作者は妻の突然の死をむかえ、没後、年を経るにつれ、かえって亡妻への愛憐が純化しているようにみえる。」 短いコラムながら、よく森氏の境地を紹介していると思った。

 今朝の日経文化面は詩人清岡卓行氏の「私の持つ最も古い本」。その1冊であるルコント・ド・リール「夷狄詩集」(原書)の版の履歴・購入前後の想い出から始まり、想い出はやがて原口統三や恩師阿藤伯との交遊にひろがる。それが日本現代詩のひとつの歴史につながるところが素晴らしいと思った。

 このところ買った本。栗林誠「データベースちょ〜入門」(広文社)2100円。井上一馬「会話編 英語できますか?」(上巻)、「同 CDセット」計5250円。水谷千治「図で解く数学(超難問編)」。他に「学習マンガ 日本の歴史」(小学館版)1〜3は次男のため。

 たまたま発見したサイト。書評パンチ。季刊およびオンライン版「本とコンピュータ」の編集に携わる仲俣暁生氏が編集長を務めるとあって、なかなか濃いサイト。編集長日記や《「IT革命」に惑わされずに、コンピュータ文化を理解するための基本図書》一覧を楽しく読んで、共感するところ多かった。

 そして昨日は、WBTオーサリングソフトの研修に一日を費やし、これまた楽しかった。

 

 

 

 

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