9月28日(日) 晴れ

日経新聞メモ。文化欄随筆は道浦母都子「花降りの海」。故郷紀州に伝わる「ハナフリ」伝承について。書評欄他。高瀬正仁『評伝 岡潔』(海鳴社、4000円)。美術欄では、白隠特集2回目。雄勁な書と達磨図の世界。

山本伊呉『夏彦の影法師』(新潮社、1600円)。山本夏彦研究サイト「年を歴た鰐の棲処」を発見した。

9月27日(土) 晴れ

池袋文芸坐に息子二人をつれて「ミニミニ大作戦」「チャーリーズエンジェル・フルスロットル」を観にいってきた。年頃の息子ふたりをわざわざ連れてなんでこの2本立なのと思われるかもしれないが、ま、家族というのはいろいろあるのであります。お目当ての「チャーリーズ・・・」は、この私でもついてゆけないハチャメチャぶりで、よりまともな息子どもには益々ついてゆけなかったみたい。ま、面白かったしお色気たっぷりで良かったけどね。併映の「ミニミニ」はなかなか良かった。こういう、ドンパチの少ない犯罪ゲームものは好き。帰路、光芳書店(線路際の支店)に立ち寄るが、マンガが増えて店の様子が変わっていた。続いてジュンク堂へ。日本屈指の大書店のことも息子どもに教えておかねばならないという教育的配慮(?)。息子どもは生まれた頃から親父のへんな本に囲まれかえって読書からは遠い存在になってしまったようで、すまないと思ってる。かくいう親父は大きな個性的な本屋が多いからこそ遥々東京まででてきたようなものだが。このジュンク堂で先日トークショーをやった名残か、4Fに松岡正剛の小コーナーが設けられていて、ビデオや変な小冊子がいっぱい並んでいた。中公文庫の『遊学』上下巻を手に取っている紳士もいる。俺はこの元本もってるんだぞ、と腹の中で自慢する。4F教育・心理のコーナーで、心理テストの統計処理技法の本をしばし立ち読み。品揃えはさすが。類書をいくつか検討した後、この前かった世評の高い入門書 南風原朝和『心理統計学の基礎―統合的理解のために』を読み続けることにした。なにせみな高い本だものね。

◆行き帰りの車中で、高橋 正視『項目反応理論入門―新しい絶対評価』読了。著者の意気込みはわかるが、残念ながら良書といえない。数式をあまり使わぬ統計や数学の本は読者を解った気にさせるだけで効用はない。ただ、著者が自分の体験に即しながら自分の血肉にしようと努めながら論を進めてゆく、その態度には好感がもてた。引き続き、項目応答(反応)理論の本を探索中。

ヘイエルダール『アク・アク』(上・下)(教養文庫、300円)、丸谷才一・大野晋『日本語で一番大事なもの』(中公文庫、300円)@音羽館。日本語で一番大事なものとは助詞のことの由。助詞・係り結びなどについて、大野理論と丸谷才一の才が火花を散らす。ぼちぼち読んでます。大野晋の編纂した岩波古語辞典はわたしの好きな辞書。割き・裂き・咲き・崎・先・岬(御崎)・栄え・サキワイ(幸) みな共通の原日本語 sak- から来る語とする。(うろ覚え)

◆渋茶庵さんより季刊『BOOKISH』最新号を送っていただいた。

◆北大路魯山人『魯山人味道』(中公文庫)がなかなか良い。引き続き、『魯山人陶説』も買わなくては。戦後間もない頃、魯山人は、日本にかけこんだイサム・ノグチ(野口米次郎の息子)と李香蘭の、ままごとのような結婚生活を支えたことで知られる。このことをドウス昌代の評伝で知って以来、魯山人への興味が増した。

9月23日(祝) 晴れ

台風一過の秋晴れ。泉麻人(東京自転車日記?)よろしく家族で多摩サイクリング道でも走ろうかと思ったが、息子どもがぐずり、お流れ。気分を害してひとり石神井公園に古本屋行。マン『ゲーテを語る』(岩波文庫、200円)、北大路魯山人『魯山人味道』(中公文庫、200円)@きさらぎ文庫。清沢洌『暗黒日記』全3巻(版元失念、4500円)は見送り。草思堂では、小林勝人訳注『列子』(上・下)(岩波文庫、800円)、森銑三『明治人物閑話』(中公文庫、280円)、竹西寛子『詞華断章』(朝日文芸文庫、180円)を買いおく。続いて三省堂にて須川邦彦『無人島に生きる十六人』(新潮文庫、400円)、これは椎名誠が復刊させた漂流譚の幻の傑作なる由(椎名誠解説)。

午後3時ごろから、妻とふたりで中央線沿線にサイクリング。荻窪から東に折れて川本三郎好みの界隈を走ればもう西荻窪。気の利いた喫茶店かレストランで食事でもと思ったが結局巡ったのは古本屋のみという無粋さ。道浦母都子『女歌の百年』(岩波新書、360円)@花鳥風月。(葛原妙子他に関心あり。) あまり気の乗らぬ妻を連れて、スコブル社、音羽館、天心堂などを巡った。天心堂は恐る恐る店頭に佇んだのみ。その隣のアンティックショップでも古本を扱い、そのまた隣の店(業態不詳)でも憂い顔の女店主?がひっそり佇んでいる不思議な界隈。これだから中央線沿線は大好きだ。

帰路は西荻窪から石神井公園へ一直線。石神井池を過ぎ、踏切そばの「鳥でん」にてふたりして釜飯食す。

そういえば、Amazonから統計学・テスト理論の二書が届き、読むべき本山積み(笑)

9月21日(日) 

◆かぐら川さんのホームページ、リンク集に加えました。http://www3.diary.ne.jp/user/325457/

◆心理学に急きょ傾倒しているこの頃。Y女史からEQテストに関する詳細な資料を送付いただきました。ここに謝意を表します。http://www2.tokai.or.jp/HARMONY/

◆今日も仕事。昼休み、パルコのブックセンターにて心理学の統計的アプローチに関する本立ち読み。もっとじっくり立ち読みせねばどれが適切な本かわからず。なにしろ皆高い本なのでいささか躊躇う。しかし宏大な心理学・統計学の世界の一端に足を踏み入れたのはわかった。

◆同じく立ち読み。松岡正剛『遊学』(上・下巻)(中公文庫、各1,000円)。帯に「幻の大著」とあり初期松岡ファンとして大いに溜飲を下げる。四半世紀ぶりの快挙と喜びたい。

◆吉祥寺さかえ書房にて『百年の恋』『竹西寛子随想選?』(岩波書店)などに惹かれた。

以上、台風の関東接近を間近にした夜に記す。

9月20日(土)  ブックステーション閉店

秋雨のなか、いってきました、神田小川町ブックステーションの70%オフ閉店セール。一家揃ってでかけるあたりが酔狂の極み。前回目をつけておいた岩波文庫赤帯コレクション(300円中心)から、ごっそりカゴにつっこんできました。

アナトール・フランス『神々は渇く』『昔がたり』、ズーデルマン『憂愁夫人』、シュニッツレル『恋愛三昧』、ゲエテ『タッソオ』、シュトルム『白馬の騎士』、シャミッソー『影を失くした男』ラーベ『雀横丁年代記』ケラー『村のロメオとユリア』、『アンデルセン自伝』、サンド『アンヂアナ』(上・下)、マイヤーフェルスター『アルトハイデルベルク』、ロンドン『荒野に生れて(白い牙)』、イパーニェス『葦と泥』、宇野浩二『蔵の中・子を貸し屋』、『金槐和歌集』、『草の葉(中)』 計18冊しめて5000円×30%=1500円也。特に戦前の岩波文庫には愛着を感じるこの頃。

夕食は小川町近くの中華料理屋にて。(目当ての台湾料理屋が閉まってたので)

9月20日(土)  想い出のバンビ

Mさん憶えてますか?吉祥寺のバンビ。織田廣喜画伯の絵が印象的な、こじんまりした洋食の店でした。あれはもう二十数年前。金はなかったけど時間と夢だけはたっぷりあった時代でした。

さて時代は流れ、吉祥寺に勤めて丸八年。別に忘れたわけじゃなくて、東急デパート裏の界隈をひっそり探したこともあったのですが、長い年月が経って私は曲がる角をひとつ勘違いしていたようです。あの可憐な店はみつからずじまいでした。昨日Iさんと吉祥寺で落ち合い、ひょんなことから懐かしのバンビを探そうということになりました。彼が案内してくれたのは、わたしの覚えていたのとは違う一角。なるほどそうだったかと膝をたたきました(笑

9月も終わりというのに日差しは相変わらず厳しい。汗を拭きつつたどり着いた一角。・・・そこはもう洒落た洋品店になってました。

「なんのかんのといっても・・・・」「・・・あれから四半世紀だもんなあ・・」。ふたり寂しく苦笑いすることでした。

さて後日譚です。

今朝、ふと思いついて、吉祥寺+バンビでgoogleすると、おう、みつかりましたよ。店の名をシャポー・ルージュと変えて、東急デパート手前に移転して今もバンビは健在なのでした。

http://www.tepore.com/gourmet/20020603/detail/01.htm

ネットでいろいろ調べてみると、味が落ちたと嘆く古いファンもいるみたいで、昔日そのままというわけではないかもしれないけど、それでも青春の思い出の店が今も健在なのがわかってなんとなくうれしい朝なのです。

Iさんからは、伊藤整『女性に関する十二章』(中公文庫)、『若い詩人の肖像』(文芸文庫)を譲ってもらった。

9月17日(水) 晴れ

例年になく残暑(とはもう言わないのだろうが)が厳しく、夏バテならぬ秋バテといったところ。不規則かつ長時間の仕事も身に堪え、家庭のほうもいろいろ抱えて、中年大黒柱丸は沈没寸前。軽いウツかもしれません。そういえば、旧友IさんやKさんもこのところ音信がないなあ。というかそもそもこっちがこういう状態なんですけど。お元気ですか?もう少し涼しくなったらのほほんと一杯やりましょう。

9月15日(祝) 晴れ

◆大岡昇平『ザルツブルクの小枝』(中公文庫)読書中。18年前に買い求めた本だが以来読むきっかけがなかった。読み出すと面白い。1954年(昭和29年)当時のアメリカが、東洋の敗戦国の一文人の目で活写される。ここから、例えば『萌野』まで、はたまた『成城だより』まで、時代をみつめる作家の眼差しは変節していない。

◆ちくま文庫の新刊、岡崎武志『古本極楽ガイド』をざっと読了。ちくま文庫の前作よりも興趣に富む。木山捷平にちなんで武蔵野五日市街道沿いを歩いた『軽石』ツアーや、上林暁『聖ヨハネ病院』訪問記など、かねてより気になっていた文章もやっと読めた。内堀弘氏(石神井書林)や高橋徹氏(月の輪書林)など古書店主へのインタビューもなかなか。ほぼ同世代の岡崎氏、古本屋店頭に佇む風貌に親近感を覚える。

◆同じちくま文庫の新刊。ネルヴァル『火の娘』の帯には、「奇跡の名作 シルヴィー」とあって、店頭でう〜んと唸る。簡潔ながら超然と胸を張るスタンス。さすがじゃ、筑摩。だてにネルヴァルの全集を二度も刊行したわけじゃないな。このちくま文庫版は、その二度目の全集に準拠するとあるから、校訂や注釈の緻密さは自ずと知れるところだ。詩には原詩も付されている。はたまた、バートン版千一夜物語も刊行開始とか。日経の書評欄では書評子が本邦初のバートン訳の文庫化と説明してるが、嘘つけ、昔角川文庫ででてたじゃないの。バートン版は註釈がいいよね。

9月14日(日) 晴れ

強い風でスモッグが吹き払われ、澄んだ高い空が広がっている。秋。しかしながら仕事が山積していて軽いウツの様相。ながらえばまたこの頃が偲ばれようか。どうもいろんな意味で衰えを感じ、弱気になっているようだ。

中国詩人全集『総索引』(岩波書店、300円)、巌谷大四『懐かしき文士たち 戦後篇』(文春文庫、100円)@上石神井。昨夜は大岡昇平『ザルツブルグの小枝』を楽しく読んだ。

9月13日(土) 晴れ

今日もまた、真夏のように暑い。

南風原朝和『心理統計学の基礎―統合的理解のために』(有斐閣アルマ、2200円)、高橋 正視『項目反応理論入門―新しい絶対評価』(イデア出版局、1800円)をAmazonに注文。

岡崎武志『古本極楽ガイド』(ちくま文庫、800円)、星野道夫『長い旅の途上』(文春文庫、676円)。

9月8日(月) 晴れ 

ちょいとした用事があって昨日は練馬駅に。古本・遥にて大曲駒村『東京灰燼記 関東大震火災』(中公文庫、550円)。奇特にも震災のさなかで今で云うルポルタージュをものした大曲駒村の息遣いが伝わる本。復活させた中公はさすがである。駒村の娘(当時小学生)の斎藤浦子さんが著作権継承者で、短い文を寄せている。今も健在なりや。

3連休中、たいしたことはせなんだが、それでも毎日古書店に顔を出し、それなりに家族サービスもやっている。

明けた月曜、課題は山積、トラブルは噴出(笑)。寂しく、寄る辺なく、思いうたた、ひたすら眠いのであった。歳を痛感。

9月7日(日) 曇り

◆ほうほうの体でたどりついた3連休だけど、いまのところたいしたことはしてない。金曜日は、神田Kさん事務所で打ち合わせ。帰り道に寄った神田小川町ブックステーションで閉店を知った。全品3割引ということなので、かねて目をつけていた岩波文庫の棚から、ハウプトマン『日の出前』シュニッツラー『ベルタ・ガルラン夫人』ハーディ『幻想を追う女』『月下の惨劇』『緑の木陰』(各210円)を抜く。今になって思うが、アナトール・フランスやシュニッツラーなどもう少し買い込んでおくべきだった。

◆こののち、神田古書街に足をのばし、田村書店・小宮山書店など一連の店をひやかすが、感興を覚える本なし。強いて挙げれば立原道造全集第6巻書簡集2500円にめぐり合ったが、値段の関係で見送り。稲垣足穂『僕の「ユリイカ」』南北社版帯なし初版4000円@小宮山書店なども、値段相応で買ってもいい本だったのだが(ちなみに帯付は8000円)、これも見送り。20代後半独身のころは迷わず買っていたろうが(角川書店版『青い箱と赤い骸骨』などは当時5000円で買った)、書籍蒐集についても執念を燃やす気力が失せてしまったようだ。それにつけても一方でこのところも無意味な散財はしている訳で、蒐集家のはしくれ(というほどのこともないが)としては後悔の念にかられる。

◆新潮日本文学『中山義秀集』(100円)@BookOff。大岡昇平の薦めによる。ぼんやり過ごしてる3連休だが、大岡の全集12・13を丁寧に拾い読み?できたのは収穫だった。小生ごときカンの鈍い人間には、時評といい文芸評論といい、昭和30年代から40年代にかけて書かれた文こそ新鮮に感じる。少年犯罪の増加、専守防衛国家日本の矛盾、大衆小説の<工業化>など、実は40年前から顕著な問題であったことを改めて認識させられる。

9月5日(金) 晴れ 君子不器

◆この間ずっと壮絶な仕事漬けの日々だった。土曜の朝出勤して帰宅したのは火曜の朝3時。その前後も似たようなもの。泥沼にどっぷりつかるような仕事だった。今後の仕事のあり方・チームに必要な人材など、いろいろと考えさせられることが多い。

◆夜更け、中川一政『裸の字』(中公文庫)を眺めた。書画集である。巻末に書き下し文と出典一覧があるのがよい。例えば・・・、「君子は器ならず」、論語だそうだ。いいなあ、東洋の倫理。直感的に了解できる。器量の大きいひと、人間の器。そんなのは君子のあずかり知らぬこと。なにかを収める(便利な)入れ物ではない、ということなのだろう。ま、手近の岩波文庫版ででも調べればちゃんとした解説があるのだろうが、そんなことはかまわず、直感的にぐいぐいと了解しながら、これら中川一政の書を眺めてゆくと、独特の雄渾な書体と東洋の引用の織物が、渾然一体となって、摩訶不思議な幸福を惹起するのであった。西荻窪花鳥風月で590円で買い求めた本(版元品切れ)。中川一政の他の文庫も探そうと思う。

◆この間買った本。児島襄『太平洋戦争 上・下』(中公文庫、各100円)、高木惣吉『太平洋海戦史』(岩波新書、100円)、東海林さだお『某飲某食デパ地下絵日記』(文春文庫、200円)、『東京人 1996年3月号』(300円)。

◆職場近くの「りぶる・りべろ」に大岡昇平全集のバラ売りがでた。中央公論社版(昭和49年刊)。作家として油の乗っていた時期の全集だからもとより業績の全貌がつかめるわけではない。が、しかし、一巻500円と安く、堅牢な造本にも惹かれるものがあり、店頭でしばらく迷った後、第12巻(評論2)・第13巻(評論3)を買った。こののち、(評伝)や(評論)の残り巻を買う予定。昨夜は「篠田一士氏に抗議する」などを読んだ。

 

 

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