8月28日(木) 曇り

目下成績処理中の模試、次の9月の模試の準備、毎日回収中の基礎学力を診るテスト8種、これだけでも死ぬほど忙しいのに、加えて今晩はサンデー毎日座談会出席。このため昨晩は、下北沢にてS氏とおちあい、大学入試現況についていろいろと教示をうけた。居酒屋の片隅で、ぶ厚い蛍雪時代増刊号とノートを広げて、談義した。生ビールが美味かった。Sさんに深謝。

もう連載も終盤にかかっているが、今月の日経私の履歴書は、水木しげる氏。戦争中、ラバウルにて生死の境を彷徨っていたときに、命を救ってくれた原住民トライ族との魂の交流。戦後26年を経て、その地を再訪し、当時の命の恩人たちと再会した。日本の童謡を歌って氏を迎えてくれたという。なんと戦争中に教えた歌が歌い継がれていたのだ。

昨日も昼休み西荻窪に出没。音羽館で買い求めドトール珈琲で読んだのが、奥村正二『戦場パプアニューギニア 太平洋戦争の側面』(中公文庫、200円)。「飢えとマラリアに苦しみ、大本営に見離され孤立無援の日本兵を支えたパプアの人々」(本書より)ニューギニア原住民と日本兵の交流を、丹念に追った本のようだ。

8月25日(月) 曇り

昨日もまた暑かった。フライパンの上で炒られているようだ。模試の関係で出勤。毎日毎日仕事に追立てられてつくづく嫌気がさす。

吉祥寺藤井書店にて、青木正美『古本屋四十年』(福武文庫、300円)。マクドナルドで少し読む。葛飾区堀切で今もなお健在の古書店。HP。先日の高井有一『夜の蟻』の舞台も堀切。堀切にゆきたくなった。

家に帰ったら、アマゾンから金子光晴訳ランボオ『イルミナシオン』(角川文庫、600円)が届いていた。
 束縛されて手も足もでない
 うつろな青春。

 こまかい気づかいゆえに、僕は
 自分の生涯をふいにした。        「いちばん高い塔の歌」

8月23日(土) 晴れ

先日までの涼しさが嘘のような猛烈な暑さ。

休日出勤の土曜日。鬱々と仕事をする。

夜、帰り道、上石神井駅前のせきぶん堂書店に寄った。こういう気楽さだけが唯一の救い。

店頭本。坪井忠二『数理のめがね』、ロゲルギスト『物理の散歩道』『第五物理の散歩道』(すべて岩波書店、各100円)、獅子文六『娘と私』(新潮文庫、100円)、海野弘『ココ・シャネルの星座』(中公文庫、100円)で気を良くし、店内で、清沢洌『暗黒日記 1942-1945』(岩波文庫、400円)、島村利正『妙高の秋』(中公文庫、320円)。

8月22日(金) 晴れ

父の命日。吉祥寺藤井書店にて、高井有一『夜の蟻』(ちくま文庫、250円)。表題は中村草田男の句 夜の蟻迷えるものは弧を描く に拠る。妙に惹かれたので買い求めた。堀切菖蒲園まえの古い家に住む老夫婦の日常をえがくという。トーマス・マン『ゲーテとトルストイ』(岩波文庫、200円) 何故かこのところ藤井書店で古本文庫を買うことが多い。実は2階の一角にひっそりとご自慢の文庫のコーナーがあるのだが、あまり注目されていないみたいだ。値付けが大雑把(褒め言葉)で、掘り出し物が多い。

難解かつ煩瑣な仕事が累積していてつくづく心労が深い。仕事の合間、家族のことを思いうたたである。ほとほと人生に疲れているのだが、妻と息子ある身、弱音を吐くこともままならない。

8月21日(木) 晴れ

一週間ぶりに晴れた。暑い。家に帰ってシャワーを浴びて、飲む恵比寿黒ビールの美味いことよ。これが目下の人生の幸せ、というわけでもないが。

家庭の幸福。

徳川夢声『夢声戦争日記抄』(中公文庫、400円)。夢声日記全が手に入らないのでしかたなく。このカバーデザイン嫌いです。

金子光晴訳のランボオ『イルミナシオン 他』(角川文庫)をamazonに注文。よく知られているかどうか解らないが、初期の金子光晴は、ボオドレエルやランボオの強烈な影響下にある。たまさか上京したての頃(昭和50年ごろ)、晩年の金子はいんなあとりっぷ等にさかんに書いていた。今になって思えば老いて矍鑠、老詩人の活躍ぶりをおおいに賞賛すべきところ、その当時は妙に律儀に反戦詩人金子を敬愛していたので、ジジむさい詩人に失望し、やがて金子光晴から遠ざかったのだった。当時出た中央公論社の全集を初回配本は買い求めたので、実家にいまもあるだろう。詩人金子を敬愛するあまり、世評高い自伝や翻訳から遠ざかってしまった、その罪滅ぼしをしているところ。

8月18日(月) 曇り 松岡正剛へのオマージュ(予習編)

およそこのひとほど本棚を背にした姿の似合うひとはいない。(あそうか、Borgesがいるか、他には。) 松岡さんのうしろにあって似合う本とは?木村泰賢全集(法蔵館?)、折口信夫全集(中公)、内藤湖南全集(筑摩)、南方熊楠全集(平凡社)、白鳥庫吉全集(岩波)、稲垣足穂大全(現代思潮社)、吉田一穂体系(仮面社)、ヘーゲル全集(岩波)、etc。

NHK総合の、いつだったかの放送で、彼が書棚をバックにした壮麗な姿を垣間見たことがある。

 

8月18日(月) 曇り

鬱陶しい雨が続く。仕事のほうも鬱陶しい。縺れた糸をほぐすようなしごとが山積していて、心労が深い。

上坂冬子『硫黄島いまだ玉砕せず』(文春文庫、250円)了。人生の後半生を硫黄島の遺骨収集にかけた男和智恒蔵の生涯を書いたノンフィクション。J・ブラッドリー&R・パワーズ『硫黄島の星条旗』と併せて読んだのがよかった。

他に、小林秀雄『本居宣長 上・下』(新潮文庫、200円)、安原顕『ジャンル別文庫本ベスト1000』(学研M文庫、100円)

写真は先日の房総太海にて親子三人で釣りに興ずるの図。

8月15日(金) 

脇村義太郎『東西書肆街考』(岩波新書、1979年、280円)@外口書店。古本屋店頭でピンと閃くものがあったがなるほど正解、実に面白い。神田・京都の東西の古本屋街の江戸時代から現代に至る盛衰史である。昨晩は昭和14年(ノモンハン事件)以降を読み通したが、例えば、戦後の混迷期における数多のコレクションの流出と散逸(例 九条家コレクション)、戦後の混乱のさなかにも即売会に足繁く通っていた篤学の学者たち、たとえば山田盛太郎!大宅壮一、社会党の鈴木茂三郎、自民党の前尾繁三郎(かねたくさんご推薦の竹内 洋『教養主義の没落』にも言及あり?)などのエピソード、高橋亀吉コレクションの去就など興趣は尽きない。同じく戦後の混迷期、売るもののなかったデパートは特別に古書部をおいて展示即売会に力をいれた。活字に飢えていたひとびとの心を捉えたのだろう。デパート古書部は、デパート・古書店ともに利をもたらした、と。今日に続くデパートと古書店の深い絆の源はここらにあったのかと納得。

かねたくさんの掲示板で松岡正剛『遊学』(1)(2)(中公文庫)が9月に発売されることを知った。ひょっとして『遊9・10』→大和書房版(1986年)の「存在と精神の系譜」が文庫になるのか。だとすればちょっとした事件だな。青春期(1976年ごろ)、昼夜逆転した生活のさなかで、憑かれたように読んだ本だ。あの本とめぐり合わなければもう少し世間的には幸せになったろうと今も後悔している。私の人生を狂わせた怖るべき読書録だ。→松岡正剛書誌

8月14日(木) 

というわけで性懲りもなく、またまた西荻窪へ。自分だけの散歩コースをみつけて悦に入ってる。

音羽館。狭い店内になんでこんなに客が多いんだろう?結城信一『石榴抄(せきりうせう)』(新潮社、1981年二刷、500円)と、青山光二『美よ永遠に』(新潮社、500円)。青山光二は新作『吾妹子哀し』の評判がいいので読んでみようと。イギリスロマン派の詩人Keatsの愛とエロスと生の軌跡を書く。Keatsは昔から憧れているがその生涯はよく知らないので興味がわいた。

ああ懐の深い西荻窪よ。同好の士燃朗氏のサイトを発見。

8月13日(水) 曇り

◆職場の昼休み。職場の前の蕎麦屋で短い昼食を取ったあと、ふと西荻窪への旅情に誘われてサイクリングすることにした。思い立っていざ、車の通らない裏通りを走ってみると、意外に道がわかりやすく、たった6分たらずで古本屋音羽館の前に着いてしまった。職場の若いひとのなかには、昼休み旨いラーメンを求めてやや遠いところまで遠征しているひともあると聞く。しかし、わたしのように、隣町の古本屋まで足をのばしている酔狂な人間は他にいないであろう。どうだ、参ったか(笑)

古本屋花鳥風月。盆休みのせいか、人通りの少ない西荻商店街のはずれで、客のいない閑雅な店で店頭本などを漁っていると、ネクタイこそしめているものの、世外れてしまった自分に気づく。いったいアンタは何者?と自問したくなる。妙に後ろめたい、ずるずると堕ちてゆくような快楽。

ここで、現代の文学4『獅子文六集 大番(全)』(河出書房、100円)、岩田豊雄『海軍』(角川書店、昭34年、200円)を拾う。ついでに買った吉田健一『東京の昔』(中公文庫、290円)は、ダブリと発覚。荷風全集28巻揃い9000円は安い。今度買おう。

◆Amazon。ハリーポッター2作セット2490円は安い。さっそく注文。

8月12日(火) 曇り

帰京して、次の日には房総の漁村に一泊。帰宅して翌日には仕事。この間、土日の休日もあったが、在宅ワークもしたりして気ぜわしい日々が続いている。どうも、その、調子がでない。今年の夏は梅雨が長かったせいか、本格的に暑くなった8月の上旬には、もう、日はやや傾きはじめ、朝、自転車で武蔵野の道を走っていると、地面に写る木漏れ日の日差しも、陰影が濃いだけにいっそう晩夏の気配を漂わせている。

朝、澄んだ高い空を見上げると、遠い日のことがしきりに思われる。強烈なノスタルジーに心奪われる。

初代ミス○島。高校時代に憧れたひとがそうであったことを先日帰省の折に母が教えてくれた。驚いた。帰京後、くだんのHPを探すと、最近1・2年のミス○島についての記事がみつかったけれど、二十年以上まえのことは知るべくもない。事態の本質に気づいたときは既に手遅れであるという悲しみ、について昔松岡正剛が書いていた。稲垣足穂『弥勒』やネルヴァル『オーレリア』の文脈だった。そう、ネルヴァルならばさしづめ『火の娘』シルヴィーの最終節だろう。「ご存じなかったのですか! あのひとは○○○修道院で亡くなられました。18XX年に。」わたしの初恋のひとは、三人の子を得て幸せに暮らしているという。

◆J・ブラッドリー&R・パワーズ『硫黄島の星条旗』(文春文庫、350円)、金子光晴『ねむれ巴里』『マレー蘭印紀行』(ともに中公文庫、計450円)、檀一雄『わが百味真髄』(中公文庫、180円)、モリエール『女房学校』(岩波文庫、0円)

◆リー・リンチェイ主演の『方世玉』『方世玉2』、秀逸。16日からは『Hero』もロードショウ。

◆日経日曜美術欄、8月3日&10日付の特集「戦没画学生の青春 上下」。久保克彦『図案対象』、他。

◆息子二人は、サイクリングで練馬→横浜戸塚行を完遂(約60km)。そこから江ノ島までサイクリングするといっている。

8月6日(水) 

休暇を一日返上して、仕事にでかけた。

昼休み、このところ、Pascal風の思いに捉われたり、人生の来し方行く末に思いを致したりしているのだが、これが妙にずっしり心に響いているので、これを払拭せんばおかずと、古本屋藤井書店に行った(笑)

初めに目についたのが、松沢呉一『エロ街道をゆく 横丁の性科学』(ちくま文庫、300円)。えへん、ええっとまあ、後学のために買ったのだけど、目に狂いはなかったみたい。さすが、敬愛する筑摩だけあって、なかなかに侮りがたい本であった。次に、大竹省三『遥かなる鏡 写真で綴る敗戦日本秘話』(中公文庫、250円)、牧羊子『金子光晴と森三千代』(中公文庫、200円)。ひもじい猫のような我が感性にはこれらの本は天啓のようにみえ、オロオロ、よろよろと、買い込んだ次第。

8月4日(月) 〜8月5日(火)

帰京するや否や、今度は千葉県鴨川市近郊の鄙びた漁村に一泊二日の家族旅行。海水浴・釣り・温泉などを一泊旅行で楽しみつくした。月曜朝、出勤途中のサラリーマンたちをよこに、東京駅八重洲口から高速バスに乗車。アクシー号というバスで、アクアラインなどを経由し約2時間で鴨川に到着。ここからバスで約10分、太海駅そばの旅館に到着。太海海水浴場や仁右衛門島などの観光地まで徒歩数分の便利な旅館。部屋からは太平洋のやや大きな波が磯を洗うさまが見下ろせる。

町自体は典型的な漁村で、朝方の港の周辺では網の手配や干物作りに精をだす年配の男女が目につく。ここで息子たちは朝な夕な釣りにも挑戦した。釣った魚は持ち帰らずすべてリリースしたので釣果はないが、港の堤防のしたには、澄んだ青い水のあちこちに様々な魚(イシダイ・メジナ・ボラ・ベラ・フグ・カワハギ等?)が泳ぎまわり、目も楽しませてくれた。

旅先で『重臣たちの昭和史』を読んだ。

7月31日(木) 〜8月3日(日)

鹿児島帰省。親孝行のためにも、今後はまめに帰省することにしよう。母親も思っていたより元気で安心した。父の墓参、母の兄弟の家を順繰りに訪問。この間亡くなった人々の弔いの為。天寿を全うした叔父さんもいれば、若くして急逝した従弟もいる。ともに冥福を祈る。訪問先の叔父さん叔母さんたちは老いて矍鑠、なかなかに感心させられる。曽祖父母よりこのかたの、母方の一族の物語を数日にわたって聞き続けた・・・。

自分はどこから来て何をしてどこへゆくのか、わたしは誰なのか・・・、物音ひとつせぬ暗い田舎の夜更けに、つらつらとものを思うことであった。

『統計学再入門』(中公新書)、高木貞治『解析概論 第3版』、『重臣たちの昭和史』などを読んだ。

帰京して関東圏の梅雨明けを知った。

 

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