10月30日(水) 晴れ

ハードな仕事の連続で心休まるひまもない。11月は中旬に楽しい企画もいくつかあるのでなんとかがんばって苦境を脱しよう。

武田泰淳『十三妹(シイサンメイ)』(中公文庫、400円@上石神井せきぶん堂)。今時武田泰淳の新刊なんて珍しいな。先日神田の某事務所で拝見した日、たまたまその後に買った北村薫の本にも言及があって、偶然ながら面白いとおもった。『三侠五義』『児女英雄伝』『儒林外史』という清・宋代の武侠小説のパスティーシュ的リライト作品(田中芳樹)である由。今読書中。

10月27日(日) 晴れ

降ったり止んだりのこの頃だ、今日は秋晴れ。やっかいな仕事をまたひとつ片付け、残り1つに休日返上で取り組む。

久世光彦『花筐 (はながたみ)』(都市出版、970円)@さかえ書房。五十年にも及ぶ長い歳月の間、私の中に燻っていた<詩>への恋情は、書きおわったいま、嘘のように消えてしまったようだ。−−これから足音もなくやってくるのは、<死>と親しむ季節である。(あとがきより) 久世おじさんにしてこのさびしいお言葉。そういえば、昨日 山本夏彦も亡くなった。

片山洋次郎『整体 楽になる技術』(ちくま新書、360円)、大岡昇平『事件』(新潮文庫、100円)、高木俊朗『憤死』(文春文庫、200円)。

10月25日(金) 晴れ

慌しい1週間だ。2つ厄介な仕事をクリアしたがまだ大きな懸案が2つもある。

高木俊朗『イン パール』読書中。こうした太平洋戦争の戦記を読んでいると、つくづく思う。日本はなんという無謀な戦争に突入し、無謀な戦略・戦術で戦争を遂行したことだろう、と。胸が痛む。こうした日本人の心性は戦後55年を経ても変わっていないように思われる。あわせて杉之尾孝生他『失敗の本質 日本軍の組織論的研究(中公文庫、350円@外口書店)を買い求めたところ。杉之尾氏(現 防衛大学校名誉教授)は母校の大先輩の由。

他に、清水義範『源内万華鏡』(講談社文庫、180円)を読書中。平賀源内は好き。

10月21日(月) 雨のち曇り

夜更けに目が覚めてふと淋しいことがある。そんなとき何故か小沼丹が懐かしくなるのだ。小沼丹『山鳩』(河出書房、1500円@りぶるりべろ)forかねたくさん。

他に、高木俊朗『イン パール』(文春文庫、250円)※インパール4部作に突入、北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、100円)、河口俊彦『一局の将棋一回の人生』(新潮文庫、100円)、例によってBookOff。

10月19日(土) 曇りのち雨

残務整理のために会社にでかけた。体調が芳しくないので夕方のKさんとの約束をキャンセル。郷里出身の方とお会いする約束だった。

帰り道、吉祥寺はりぶる・りべろにて、泉井久之助『ヨーロッパの言語』(岩波新書、100円)を店頭で拾う。帯・紐つき時代の美本。1968年の初版だ。夕方少し読んで驚いたが、これは大変な力作だ。こんな本が新書として編まれ、かつ100円で店頭にある。それにめぐり合う幸せよ。ヨーロッパとは何か?という問いに対しての精緻な歴史学的・言語学的アプローチである。読む前にすでに目からうろこが落ちた気分だ。

りぶる・りべろでは、小沼丹『山鳩』(河出書房、1500円)や吉田健一『ヨオロツパの世紀末?』1000円?、宮崎市定『アジア史概説』(中公文庫、450円?)などに惹かれたが今日は我慢。バスで石神井公園に向かい、きさらぎ文庫・草思堂の2店でも、たくさんの本をパスした。このところ随分乱暴に安い本を漁っているが、いっぽうでたくさんの本をパスしていて、のちに後悔することも多い。バスの車中で、黒崎政男『デジタルを哲学する』了。著者にはアスキーの連載以来好感を持っているがこの本はテーマが拡散しすぎ。ざっと流し読みで了。

他に、読売新聞20世紀取材班編『20世紀 太平洋戦争』(中公文庫、250円)、天狗太郎『将棋好敵手物語』(光風社出版、400円)。

10月17日(木) 晴れ

青幻記のWさんから沖永良部の黒糖焼酎をいただきました。ありがとうございました。

濫読日記つづき。松本清張『Dの複合』、30年ぶりの再読。日本中に散在する羽衣伝説や浦島伝説と殺人事件を絡めたミステリー。殺人事件のほうはどうでもいいが、羽衣・浦島両伝説に関する薀蓄が楽しめた。松本清張の語りの雰囲気は嫌いじゃないことを再発見。ここから、市古貞次校注『御伽草子(上)(下)』(岩波文庫、400円)へ。

北村薫『謎のギャラリー 名作博 本館』。北村薫は読むのは初めて。アンソロジスト北村の本領発揮、なかなか素晴らしい本だ。べつにミステリファンでなくとも、小説とくに短編小説が好きなひとには絶対お薦めの一冊。もっておいて損はない。敏腕美人?編集者と北村薫さんの絶妙の対話で、古今東西の小説のプロットが披露される。書誌に対するフォローも親切この上なく、本好きならそれだけでも楽しめるだろう。この本で紹介された古今の名品のアンソロジーが、同じく新潮文庫で3冊でているが、そこまで向かうかは未定。

他に、団鬼六『米長邦雄の運と謎』(幻冬舎アウトロー文庫、170円)・『夢野久作集』(創元推理文庫、100円)・山本文緒『シュガーレス・ラヴ』(集英社文庫、100円)(ちょっと読んだが、どうもねえ)・石川三千花『石川三千花の勝手にシネマ』(文春文庫、100円)

10月14日(月) 晴れ

今日あたり残務整理に職場にでかけてもよかったのだが億劫でやめた。まあ明日からがんばろう。午後は野暮用で神田に。所用をすませ、ブックマーケット小川町店で、高木俊朗『特攻基地 知覧』(角川文庫、250円)(※インパール四部作が揃っていたのだがヘヴィそうなので、まずはこの作品から)、大岡昇平『花影』(新潮文庫、100円)、北村薫『謎のギャラリー 名作博本館』(新潮文庫、200円)、松本清張『Dの複合』(新潮文庫、200円)(昭和48年頃、I君から借りて読んだ覚えあり、再読用)。

大崎善生『聖(さとし)の青春』、丸の内線車中で読了。若き棋士の夢と死を書いて得がたいノンフィクションであった。羽生が天才棋士の陽画なら村山聖はいのちを削って棋譜を残した陰画の天才である。もっとも人は普通、羽生でも村山でもない。何万人にひとりの天才として成功もせず、しかも村山聖のように夭逝していのちと引き換えの天才を得るわけでもない。もしひとが並外れた才を得て、かつ挫折し、しかも市井の幸せを得ることもできなければ?これが大崎善生の第二作『将棋の子』のテーマである。目下、探し中。今日、池袋リブロで、最新作である恋愛小説『アジアンタムブルー』を手にとった。リブロではSumusのフェアをやっていた。

10月13日(日) 晴れ

どこにいくあてもない連休である。雅洋さんお薦めの大崎善生『聖(さとし)の青春』(講談社文庫、648円@三省堂)が今朝ようやく見つかって、午後に読んでいる。故・村山聖九段は、昭和44年広島県に生まれ平成10年に29歳の若さで惜しまれて世を去った。幼少の頃に、ネフローゼという肝臓の機能障害で病に伏し以来学校と病院を往復する生活をおくった。病室で知った将棋の魔力にとりつかれ、その後、父母の尽力もあって、生涯の師森八段に師事した。費えゆく命とひきかえのような壮絶な棋譜を残し、無念なままこの世を去るまでの生涯を書いた本だ。今、巻なかば。生涯のライバル谷川浩司や羽生善治との激闘が本書後半のクライマクスのようだ。

他に、黒崎政男『デジタルを哲学する』(PHP新書、660円)、吉田健一『東京の昔』(中公文庫、150円)、梅原猛『隠された十字架』(新潮文庫、180円)、西郷信綱他『日本文学の古典 第二版』(岩波新書、250円)。

今朝の日経書評欄では、さきの大崎善生の新刊『アジアンタムブルー』や山本文緒『ファースト・プライオリティー』が気になった。それと、『百人一首 一千年の冥宮』の湯川薫。ミステリー作家湯川薫には、人気科学ライター「竹内薫」の顔もあるとのこと。さっそく近所の三省堂にでかけ、竹内薫『ゼロから学ぶ量子力学』(講談社、2500円)を立ち読みして、おおいに好感を持った。なぜ好感を持ったかというと、きちんと数式を導入しながら論を進めているから。数式なしの入門書で読者を解った気にさせるより、数式を用いて読者を解らせるほうが実は困難なことかもしれない。 しかし今、いかな支離滅裂読書とはいえ、量子力学にまで踏み込むのはあんまりなことなので購入は踏みとどまった。ミステリ作家湯川薫とともにマークしておこう。日経日曜版では文芸評論家菅野昭正の近況も伝える。すっかり老いた菅野氏に驚く。そうか押しも押されぬ仏文学者として一世を風靡した時代から四半世紀が経っているのだった。

10月12日(土) 晴れ 支離滅裂読書ノート2

東峰夫という作家をご存知だろうか?彼は、1972年というからちょうど三十年前、小説「オキナワの少年」で芥川賞をとった。私は当時たまたま芥川賞に関心を寄せていたので、この名前を聞いてすぐに思い出すことができたのだが。上原隆『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫、100円@BookOff)の一章は、この作家のその後の人生を追ったドキュメンタリーである。沖縄の高校を中退し、上京して日雇い暮らし。本を読む時間が欲しくて一日働いては2・3日本を読みふける日が続く。そうした時期に書いた処女作「オキナワの少年」が編集者の目に留まり新人賞・芥川賞をもらった。一躍有名になり、編集者は次々に小説を書くように勧めた。しかし東にはそんな猥雑な生活がいやでいやでしょうがない。寡作だった。それから15年で四作しか書かなかった。そして世に忘れられ、編集者も愛想を尽かした。沖縄の女性と結婚したが続かず別れた。別れて後一度だけ上京した妻子と会ったことがある。別れ際子どもを思いポロポロ泣いた。

今東峰夫は東京近郊のアパートでひっそりと暮らしている。極貧の生活だという。「学歴を捨て、故郷を捨て、月給生活を捨て、有名であることを捨て、妻子を捨てて、東が得たのは、ひとり自由に想像することのできる生活だった。」 (今、ネットで調べると関川夏央さんのインタビューがみつかった。)

『友がみな我よりえらく見える日は』は、挫折に深く傷ついた人生を送るひとたちへのインタビューをまとめたノンフィクションだ。「束縛されて手も足もでないうつろな青春。こまかい気づかい故に、僕は自分の生涯をふいにした・・・」(金子光晴訳・ランボオ『いちばん高い塔の歌』)。酒を飲んでビルから転落し失明して失意の生活を送る中年男性が昔愛唱した詩だ。挫折の深いところからひとはどうして己を回復するかというテーマの本。

他に、アンディ・マクナブ『SAS戦闘員 (上)(下)』(ハヤカワ文庫、700円)。熊襲さんご推薦の『暗闇の戦士たち』(朝日文庫)に続く特殊部隊モノ。これも秀逸。阿川弘之『春の城』(新潮文庫、100円)

10月9日(水) 曇り 支離滅裂読書ノート

高橋克彦『闇から来た少女』 評判ほど面白くなし。速読で読了。半村良『英雄伝説』、二十数年ぶりに再読したが面白かった。古代神社群と特殊なアルカロイドをもつ百合をめぐる謀略の謎。最後のくだりで数千年眠り続けるコトシロヌシがでてくるが、これくらいの荒唐無稽は許せてしまう。この伝で松本清張『Dの複合』なども読み返したくなったが、意外に入手しにくいものですね。明石散人『鳥玄坊 一』、う〜ん、熊襲さん激賞の明石散人だが、いまいちわかりません。(超)古代史に関する薀蓄を素直に楽しめればいいのですが、のっけから徐福(あの徐福伝説の徐福)が歩き回ったりしていると、もうついてゆけない。SFと伝奇小説は違うと思うのだが。というわけで口直し(笑)に梅原猛『古代幻視』。恥ずかしながら梅原猛古代学はこれが初めて。(柿本人麻呂論あたりも買っておこう。)九州は佐賀一帯の徐福伝説を扱う章がなかなか刺激的。引き続き読む予定。この勢いで丸谷才一・山崎正和『日本史を読む』に突入。昼食時マクドで読むはじめたがさすがに博覧強記のこのおふたりの対談は無茶苦茶面白い。対談の妙。引き続き読書中。伝奇小説へののどの渇きをいやすため黒沼健『失われた古代大陸』などもパラパラめくった。この種の超古代史がらみで原田実氏のおもしろいサイトもみつけた。

かわって半藤一利『戦士の遺書』。太平洋戦争に散った、あるいは戦後に亡くなった28人の軍人の遺書をつうじて軍人の生涯と戦争の全体像を照射する試み。半藤さんはこの手の本をたくさん書いているが、この本も秀逸。深夜涙が零れてしょうがない。

10月6日(日) 曇り

昨日。長男とふたりで池袋に映画を観にいった。何故また長男と?まあそういうのが思春期の息子をもつ父親のちょっとした気遣いなのであります。『少林サッカー』。怪作。世界人気のサッカーと少林寺拳法を組み合わせたら面白いかろうというたったひとつのコンセプトでここまで突っ走るのは立派。マトリックスやT2などのパロディも自家薬籠中のものとしてる。『スパイダーマン』。秀作。青春映画としてもホロリとさせられる。なぜか映画を観ながらエリアカザンの『草原の輝き』などを思い出した。主人公(ハイスクール→大学)とその親友・その父(ヴェンチャー企業の経営者)、隣に住む同級生の娘。主人公は、叔父叔母と同居している。父親がわりを果たそうとした叔父は殺され(主人公はスパイダーマンとして復讐する)、よきパトロンとして息子とその友人(=主人公)を庇護しようとするヴェンチャー企業の経営者(=悪役)は、発注元の軍事機関の無理無体に応えようとして人体改造に挑み失敗、悪の権化に成り下がる。物語後半は、この悪役との一騎打ちになる。最後にこの悪役(=親友の父)を倒して、惚れてきた娘の愛も取得するが、「いつまでもいい友達でいたい」みたいなことをいって娘の求愛を拒絶する。

主人公がひょんなことから万能グモに咬まれDNAに変化をきたしたことから映画は冒険活劇になりえている訳だが、無敵の男に変貌すること自体は思春期の内向的な男の子の憧れなわけで、変貌以降は主人公の妄想(幻想)と二重写しになっているともいえる。その妄想の世界で、父親殺しを果たしてみると、目からうろこがポロリと落ちて、憧れだった娘への恋もとたんに萎びて失せるという、苦い青春。

中年のわたしとしては、悪役の科学者が、発注元の無理無体な注文で自ら人体実験に挑むも失敗し、はたまた役員連中から三行半をつきつけられて経営者の椅子を奪われ、鬱憤晴らしに悪さをし放題、いったん悪さをしてみれば長年コツコツまじめにやってきた人生のなんと味気ないことよ。父親の務めをなげうち、悪の権化に落ちてゆくのも、なんとなく理解できるなあ。父親の暴走。父親だって息子のようにフェロモンたっぷりの女と遊びたいのだ。

昨日今日で買った本。支離滅裂。吉田健一『私の食物誌』(中公文庫、140円)・高橋克彦『闇から来た少女 ドールズ』(中公文庫、250円)@池袋光芳書店。明石散人『鳥玄坊 一』(講談社文庫、714円)・ノヴァーリス『夜の讃歌』(岩波文庫、400円)@書泉グランデ。文藝春秋編『完本 太平洋戦争(一)』(文春文庫、100円)・半村良『英雄伝説』(講談社文庫、100円)@BookOff。Access97基本編・活用編(ナツメ社、各200円)黒沼健『失われた古代大陸』(新潮文庫、200円)・梅原猛『古代幻視』(文春文庫、150円)・丸谷才一・山崎正和『日本史を読む』(中公文庫、380円)・江藤淳『決定版 夏目漱石』(新潮文庫、150円)・半藤一利『戦士の遺書』(文春文庫、200円)@石神井公園。 

10月5日(土) 曇り

 ・・・遠くぼんやりと、美しい娘たちの物を喰う姿を見ていた。なんとエロティックなことだろう、美しい娘が食べる姿は。今、ぼんやりと考えているのは、太古の原始時代の男と女。夕方、男が獲物をかかえて帰ってくる。洞窟の岩陰で夕陽を浴びながらふたりは食らう。獲物の血でべっとり濡れたおんなの唇。男を見てはにんやり笑う。夜ともなれば、洞窟の奥で、獣めく交合。身を寄せて眠る深い夜。食べ、眠り、番う・・・

福田和也『作家の値打ち』(飛鳥新社、100円@りぶるりべろ)。気鋭の文芸批評家が、ミステリー&エンターテイメントと純文学の現役作家100人の、最新作を含む主要作品574点を<厳正>かつ<徹底的>にテイスティングし、100点満点で採点した、前代未聞、究極のブックガイド。(帯から引用)発売当時、賛否両論侃々諤々の議論をよんだ覚えがある。毒のある本だが予想以上に的確な一言コメントに感心する。船戸与一や渡辺淳一はけちょんけちょん、大江健三郎にも辛辣。逆に石原慎太郎を激賞するなどスタンスは偏向しているが。

このガイド本を、遠ざかっていたミステリーの指針にしようと、めくっては戦略を練るこのごろ。という訳で、

桐野夏生『錆びる心』(文春文庫、220円) 表題作秀逸。冷え切った夫婦関係、妻の不倫、復讐としての家出、家政婦への転落、と、書いてみれば当たり前の転落劇の最後に、崩壊し死と狂気と老いに彩られた旧家に安住の地をみつけた女主人公の一夜の体験。構成も文も緊密。 他の作品は、しかし上手さが鼻につき、作者のシニックな視線が気にならなくはない。

他に、鹿島茂『子供より古書が大事と思いたい』(文春文庫、300円@りぶるりべろ)仏蘭西古書探訪記。阿川弘之『七十の手習い』(講談社文庫、100円)などを読んだ。

10月3日(木) 曇り

低調な日々だ。テンションが低い。仕事はまあぼちぼちで、別に悪い仕事はしていないのだが、如何せんネットに文を書くのがしんどくなった。もともと駄文だがこのところ輪をかけてしんどい。書いてると嫌気がさしDeleteしてしまう。目下、このHPに書くことは作業療法のようなものだろうか。

本は快調に読んでいる。チャーチルの回顧録抄。第二次大戦の欧州の動向が、アングロサクソンの政治的知性の筆で正確に記述されている。現代史には疎いのでいい勉強になった。

このところ昼食をマクドですますことが多い。店に入って片隅に席を確保すると、あとは干渉されないので、昼食をとりながら30分かそこら読書に集中できるのだ。夜帰宅したあとは体が疲れていて集中できないし、朝はなにかと慌しいので自分だけ読書というわけにもいかない。昼食タイムに30分かそこらでも集中して本を読むようにすれば、読書生活のリズムが変わるのだ。そんなことを最近発見した。

吉祥寺サンロードを北上して、五日市街道につきあたる所で左に曲がると、古書店藤井書店がある。こことの付き合いももう25年になるのか、昔々の学生時代、店の片隅の探求書書き込み帖に結城信一だったかの当時の探求書を書き込んだことがある。返事はこなかったけど。整理の上手な本屋じゃないし、けっして美本とはいえないが、妙な熱気がある古本屋だ。意外に回転も速いようだ。エッチな写真集を漁る漁書家の目つきも気のせいか玄人っぽい(笑)

昨日はここで何か文庫本を買って近くのマクドで昼食、というプランを立てた。コンラッド『密偵』(岩波文庫、300円)、秋山駿の中原中也評伝(講談社文芸文庫、400円?)、テオプラトス?『人さまざま』(岩波文庫、100円)う〜ん、さすがにマクドでちらちらめくる本じゃないな。このところ妙にハマった黒川博行の『封印』などを探すが無し。桐野夏生や乃南アサがやたら多いな。面白いのかしら。この手の人気作家にハマるとずるずる読みふけりそうでなんだかオジサンは恐いのね(笑)。読書も他のアバンチュールに似て、歳とともにだんだん消極的になるようだ。

という訳で十分ほど店内をぐるぐるするが、さすがに今日の一冊がみつからん。そもそもどんな本を読みたいか、それすらはっきりしていないときたものだ。で、結局買ったのが、升田幸三『升田幸三自伝 名人に香車を引いた男』(朝日文庫、200円)。今なぜ升田幸三なのか、なぜ棋士の自伝なのか、じぶんでもちと呆れたが、生涯を振り返っての名大局の棋譜もふんだんに載っていて、なんだか妙にそそられたのだった。

で、これが大正解。マクドにおける約30分、ずんずん読み、家に帰ってまたぼちぼち読みで、約半分を読んだところ。自伝にありがちな自慢話も鼻につかないし、なにしろ語り口が自由闊達でまことに面白い。(以下時間切れ、略)

10月2日(水) 晴れ

早朝に起きてカーテンを開けると、案の定、台風一過の秋晴れだった。

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