8月5日(日) 曇り

珍しくも曇天の日曜である。昨日から子供達が妻の実家に帰ったので、珍しく静かな朝だ。

このところ買った本。芝木好子「州崎パラダイス」(集英社文庫、200円)、現代哲学の冒険4「エロス」(岩波書店、300円)には松浦寿輝の「修辞的身体」を収める。他に、山崎カヲル・山本ひろ子・永井均・湯浅博雄・橋爪大三郎の諸論文が収録されている。次に、息子のために、「大辞泉」(小学館、7000円)、ちっとは勉強して欲しいので。それから近所で、Book Off開店。ベストセラー本のあまりの安さに驚く。日頃本を安く買うことになんの抵抗もない私だが、これほど新古本が二束三文の扱いをうけていることを出版業界のために些か憂慮しないわけではない。開店記念に購った本は、加藤周一「日本文学史序説 下」(筑摩書房、350円)25年ぶりに上下巻が揃った(笑)、武田百合子「富士日記 全3巻」(中公文庫、300円)、ファインマン「ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)」(岩波現代文庫、100円) 、W・ギブソン&B・スターリング「ディファレンス・エンジン(下) 」(角川文庫、100円)。ギブソンの本は、揃いをずっと探しているが店頭で見たことがない。8年前に角川文庫の新刊の時に見たっきりである。当然、上巻ももっていないのだが、しかたなく下巻のみ買った。このおふたりのいわゆる<サイバーパンク>もの、本物なのか時代のあだ花なのかは今もってわからない。それから先日亡くなった山田風太郎の忍法小説以外の本を探したが、1冊もなかった。「戦中派不戦日記」や関川夏央のインタビュー集を引き続き探そう。

その山田風太郎さんの追悼文を今朝の日経で種村季弘氏が書いている。日経の場合、追悼文は亡くなった直後の平日の文化面に掲載されるのがふつうだが、今回は満を持しての扱い、日曜文化面の全面追悼文である。種村氏の文は該博な知識を背景にしながらもゆるやかに洒脱に書いた文で、要約しにくいが、しいて書くと、晩年の「あと千回の晩飯」「続・あと千回の晩飯」を、「ほとんど演じている。何を。「人間最大の滑稽としての死」を。死という人生最大に厳粛な出来事を喜劇として演じているのだ。」(以下色つきの文は記事より引用)

拙掲示板で諸氏いみじくも書かれたとおり、風太郎の「人物が超人間的な身体運動の芸を見せるのは作者が医大出であることと関係あるだろう」。この作風は、忍法小説からいわゆる明治物へと引き継がれたと種村氏は書く。「しかしそうした作中人物の身体芸を、死を前にした作者自身の生身に適用するとどうなるか。(中略)結果はみごとに「見世物としての、喜劇としての死」上演であった。」

種村氏の追悼文の下段の芳賀徹氏のコラム。今朝のテーマは「百合」。
筑波嶺のさ百合(ゆる)の花の夜床(ゆどこ)にも愛(かな)しけ妹ぞ昼もかなしけ (万葉集 4369)
この防人のよんだ美しい映像から、バルザック「谷間の百合」のふたりの初めての出逢いまで。

日経ビジネス(8-6号)のコラム「TOEIC公認の学習サイトで目指せ昇進」。ええっ?TOEIC公認の学習サイトができちゃったの?強敵現る、ぼやぼやしてられない。公認サイトはこちら。かたやマイクロソフトとNTT-Xのe-learning提携はこちら。身辺が慌ただしくなってきた。

8月6日(月) 曇り

昨日はひっそりと暗い気分の一日だった。朝10時頃、運営しているTOEICのサーバがダウンした。アクセス過多で負荷がかかったのか、全く別のOSやハードウェアが原因のトラブルなのか、判断しようもない。サーバ自体は都心某所に設置してあるし、関係者に電話しまくっても誰もでない。しかたなくHPに<緊急連絡>のお詫び文をアップし、あとは自宅の火事を呆然とみまもるような心境であった。

携帯も切った。メールも読まない。鬱々と石神井公園にでむき、草思堂にて、小川和佑「立原道造・愛の手紙」(毎日新聞社、500円)、関川夏央「戦中派天才老人・山田風太郎」(マガジンハウス、550円)、「東京文学散歩」(教育出版センター、250円)をもとめ、帰って静かに読んだ。

このところ、自分の人生が誤りだったとしきりに悔やまれてならない。

8月8日(水) 曇り

田口ランディ「ひかりのあめふるしま屋久島」(幻冬舎文庫、533円)を昨夜から読んでいる。鬱々モードの日々にはぴったりの本だ。そういや、鹿児島生まれの私だが、屋久島・種子島はもちろん南西諸島のどの島にもいったことがない。いってみたいなあ、屋久島。そんな気にさせられる紀行文だ。

8月13日(月) 曇り

宮田登「冠婚葬祭」(岩波新書、350円)日本の冠婚葬祭の一覧。すなわち、(1)老人の祝い(2)誕生と育児(3)成人と結婚(4)葬送と供養。冒頭の章で解説される沖縄の「カジマヤーの祝い」。数え九十七歳の長寿の祝い。「九十七歳になった老人をあたかも死者と同様に扱っていたという。すなわち白衣の死装束を着せ、枕元に枕飯を供えた。そして家族や近親者がその周囲に座り、哀悼の意をこめつつ名前を三度よんだという。」<死>の儀礼と、再びの生。97歳を節目として、再び赤子のように生きることを祝い認める、共同体のシステム。

江藤淳「妻と私」(文芸春秋、100円)。奥様の亡くなられる前の数週間。都内の病院の一室でのふたりだけの時間。看護の過労で自身もぼろぼろのからだになりながら、妻の死に寄り添う夫。「日常的な時間のほうは、窓の外の遠くに見える首都高速道路を走る車の流れと一緒に流れている。しかし、生と死の時間のほうは、こうして家内のそばにいる限りは、果して流れているのかどうかもよくわからない。それはあるいは、なみなみと湛えられて停滞しているのかも知れない。だが、家内と一緒にこの流れているのか停っているのか定かではない時間のなかにいることが、何と甘美な経験であることか。」

関川夏央・谷口ジロー「「坊っちゃん」の時代」うち、第1部「坊っちゃん」の時代、第2部「秋の舞姫」、第5部「不機嫌亭漱石」(双葉社、計1800円)。全5巻の大冊マンガが揃った。関川・谷口コンビの記念碑的労作である。最近の明治文学ブームを先取りした感がある。

藤原正彦「数学者の言葉では」「若き数学者のアメリカ」(ともに新潮文庫、0円)。そういえば、正彦氏の妹、藤原咲子さんの「父への恋文」(山と渓谷社、1400円)が昨日の日経書評欄で取りあげられていた。「(父 新田次郎から)受け継いだ作家魂と文章指導の成果を、兄とともに世に問うていくつもり」(筆者インタビューより)

8月19日(日) 曇り

鹿児島に帰ってきた。98年の夏以来、3年ぶり。父の墓参をし、いくつかの親戚の家を回り、あとは息子たちの釣り三昧・海水浴につきあった。鹿児島水族館をのぞいた。叔母さん・叔父さん達が健在なのが救いだが、みんな歳をとった。ああ、おまえはなにをしているのかと、故郷の風が俺を責める。貧しい、火山灰だらけの故郷に、たち還るすべはあるのかと自問自答する。それはそれで、あるかもしれない、と、この歳になって思うようになった。幾ばくか、都会で暮らした経験を活かして、そこで貢献するすべもあるかもしれないと。しかし、それだって、故郷に飾る錦破れての帰郷にはちがいない。ひとのうらやむ旨い酒と風光明媚の郷里の日々・・・。いえいえそんなものじゃありません。わたしは郷里にいても辛いのでした。チャンチャン。

新幹線の長い車中で、小泉修「インターネットのすべて」(日本実業出版社)、清水隆夫他共著「フレッツ・ISDN/ADSLでサーバーを立てる本」(インプレス)を読破した。う〜む、有益なり。前書は、TCP/IP、インターネットセキュリティの詳説。後書は、固定グローバルIPアドレスを、(1)取得しない(2)1個取得する(3)複数取得する、場合の、個人またはSOHOのWEBサーバの立ち上げのOS別の具体的な方法の概説。というわけで、今日は、日経Linix編「Linuxサーバー構築運用実践ガイド」(日経BP社、1886円)。RedHat Linux7.1 CD-ROM2枚組が付属する。

 

8月21日(火) 

台風の影響が本州に及んでいる。おそらく今夜は大雨だろう、ああユウウツ。

昨日はかねたくさんお薦めの藤田宜水の本がたまたまツタヤになかったので、衝動買いで、田口ランディ「スカートの中の秘密の生活」(幻冬舎文庫、533円)、よくもまあこんなことまでずばずば書けるなあ。引用するのが恥ずかしいぜ。他に田口ランディ「馬鹿な男ほど愛おしい」(晶文社、100円)、福島泰樹編著「白いチョークをひとつ下さい」(新声社、100円)

8月26日(日) 曇り

このところの購入本。寒川猫持「言うてすまんが 猫持のトホホ相談」(新潮社、550円)は吉祥寺外口書店にて。7月の上旬に、かわうそ亭さんに教えていただいたひとである。大阪在住の眼科医&歌人。この本は朝日新聞に好評連載の身の上相談をまとめたもの。帯がふるってる。帯の背の部分。「役には立たぬ。」だって、ハハハ。さすが新潮社、しゃれてますねえ。それにしてもこれは身の上相談の傑作。苦笑しながら身につまされつつ早速読了。いい本であった。いい著者であった。

この猫持さんの歌集、拙掲示板では7月4日にかわうそ亭さんが紹介して下さっている(No.222)。同じ頃のかわうそ亭さんの読書日記でも紹介されているので、興味のあるかたはご覧下さい。

A・コンドラトフ「イースター島の謎」(講談社現代新書、0円)

家庭内LANおよび常時接続を目指して、ノートン・インターネットセキュリティを5600円くらい、I・O DATAのブロードバンドルーター NP-BBRを14700円(税別)で買った。一応の所、常時接続&複数PCからのインターネット接続は実現した。引き続き、Linuxサーバ立ち上げをめざして奮闘中。

今朝の日経新聞。文化面は、御歳73の哲学者木田元の「さまざまな秋の歌」。ボードレール「秋の歌」やプレヴェールの「枯葉」で小道具として登場するシャベルが如何に巴里の秋に相応しいかを実体験を交えて書く。その下、芳賀徹のコラムでは「七夕の夜のあわれ」、星の歌人建礼門院右京大夫の歌のいくつかや菅原道真が891年7月7日に作ったという和漢朗詠集の「七夕」を引く。書評欄では、サイモン・シン Simon Singh の新作「暗号解読」(新潮社、2600円)が気になる。「フェルマーの最終定理」の著者。

8月29日(水) 曇り

昨日、飼っていたグリーンイグアナが失踪した。今日もマンションの周り、特に樹の上あたりを捜索したが見つからず。ああ、生きているのか死んでいるのか、爬虫類といえども、情が移ってしまっていたので悲しい限りだ。

中国詩人選集二集13 高橋和巳注「王士【示+眞】」(岩波書店、500円)。先日の芳賀氏のコラム「詩歌の森」で紹介されていたので。

 

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